作者の中身なんて〜授乳でアレなマミーブレイン〜

好きな本やコミック、脚本など、個人が主体となる創作物があるとき、作者の中身を知りたいかどうか問題がある。

私個人はかつて好きな本やコミックがあればその作者のことまでもしっかり知りたかったが、今は知っても知らなくてもどちらでもいい。

昔はコミックの細かな書き込みや小説の後書きまでも愛していて作者の気配を感じていたけれど、今はきっとその時代を過ぎたのだ。

創作者であっても一人の人間としての営みはそう大差がないと想像できるので、中身を特別知りたいとは思わない。

ただ……それは今の気分という可能性も否定できない。

なので、自分の創作アカウントで私もまた基本的にプライベートのことを語らないようにしてる。

創作物に特別な色がつくのは不本意な面もあるからだ。

とはいえ、美術品や文芸作品を考察する際に、作者の生い立ちを考慮する研究方法はメジャーだと思う。

個人的には創作物の持つダイナミズムを何でもかんでも生い立ちに帰着させるのがあまり好きではない。

親と子どもが別人格であるように、創作物もまた作者とは別物だと思うからだ。

と言いつつ、私の創作アカウントに関する「中身」を少しだけ書いてみたい。

創作の素材や養分にするはずが、どこにも入れられずに残っている部分を書き記したくてうずうずしているからだ。

第四子を出産し一日経った頃、あまりに暇なので、「あーなんか書こう、暇だし訳あり俺様系の男の子と相手の頰を張るくらいに強めの女の子の話を書こうかな?」と思いつく。

妊娠8ヶ月くらいから、Web仕事を一旦休んだタイミングで気まぐれに恋愛小説を書き始めていた。

書きかけの原稿は自宅にあるので入院中の暇つぶしに新しい話を始めようとしていたのだ。

スマホでキャラクター設定を作りすぐに話を始めていき、知らないうちに主人公の母が死ぬ流れを書いていた。

その話は完成してWeb上に掲載している。

キャラクター造形やストーリーに苦戦したし、キャラクターは俺様でも強めでもない、こじらせカップルの話になったが、死を描いた言う意味でこの作品は私にとって意味があった。

私の書いたR指定要素のある現代の男女恋愛小説の中では、現状一番読んでもらって評価もつけてもらえたものだ。

※Webにおいては異世界ものが人気で、私の作品でもそちらの方が評価もブックマークも多い前提がある。

子どもが生まれる少し前に祖母が亡くなり、子どもが生まれた後に祖父が亡くなっている。

この死を消化するために、先の話は生まれ、完成させたと思っているのだ。

もう一つ祖父の死の前に始めた話が、祖父に着想を得た話だった。

※この話は小説賞に投稿するにあたり、一旦Web上からは取り下げている。

創作アカウントで、自分の中身を話すのは個人的に好みじゃないので、そちらではあまり自分ごとを書かない。

けれど、自分の人生折々の経験や感じてきたものが、確実に養分となって作品は育つとは思う。

ただ……作家の私生活の気配を感じて、気分を悪くする人もいるかもしれない、そんなの知りたくないと忌避されることを思うと、創作アカウントで一個人の出来事は発信しにくいのだ。

例えばかつて授乳しながら、小説やクライアントへの納品用の原稿を作っていたり、鑑定サイトでお客様の結果を打ち込んでいたりすることはザラだった。

アダルト要素のあるコミックを授乳しながら描いてみたこともある。

作ったものは表に出ているもの、クライアントしか見ないもの、死蔵になっているものなど、様々なものがあるけれど、家でのパソコン作業は上半身ほぼ剥き出しの状態で行うことも多い。

R指定の小説を授乳しながら、書くことも多かった。

ただこんな話を私の小説を読んでくれる人が聞いてもちっとも面白くない、と思う。

この頃は授乳しているときには、小説は書かずに本を読むかパズルゲームをするようにしている、なんて、聞いてもさらに面白くない。

授乳のたびにイってた、みたいなことの方が本来書くべきことなのか?と勝手に身を削ろうとしてみる。

末子の授乳は、甘美の時間だった。

この子を自分が生かしているという、本能的な快楽と乳頭刺激による子宮収縮が強い時期、とりわけ新生児から乳児期は、言葉を選ばず言うなら……授乳で毎回、イッてた。

10-15回/日の頻回授乳であれば、その回数だけイッてる。

ぬるい快感がずっと続き、浅い眠り経験して目覚めれば、あっ、イッてたわ、と知る。

今は幼児になり、それほどよくない、むしろセクハラ感がともなって苦痛だ。

飲みながら、飲んでいない方の胸を揉む、ややセクハラ気味だと思う。

今回の出産は乳頭刺激で子宮収縮を起こし、陣痛を強める技を助産師さんがほどこしてくれたこともあって、身体がしばらく、その刺激を記憶していたようだ。

素晴らしい技だけれど、日常生活においては不要な子宮収縮をもたらす。

その期間にいくつも恋愛小説を作り投稿していた。

体内に残るテストステロンと、そして乳頭刺激が小説を書く手助けしたと言える。

身体の導きで、書いていた。

授乳しながらラブシーンを描くのはかなりシュールだとは思う。

4、5本の小説を同時進行し、さらにコミックを描いてみたときには、一時的に頭がおかしくなっていた自覚がある。

子どもを、書いているキャラクターの名前で呼んでしまう。

キャラクターのセリフをリアルで口にしてしまう。などのリアルへの侵略もあり、書きながら授乳をすることで、身体の感覚がさらにおかしくなる。

性的な刺激というのは、何も性行為にまつわることだけじゃない。

母乳を出すホルモンもまたそうだ。ホルモンにコントロールされ、さらに創作をすることでマミーブレインは加速していたらしい。

リアルとフィクションが混ざっていたカオス状態だった。

誰かに頼まれたわけでもない、クライアントワークでもない趣味の小説だ。

自分の意向で始めて、勝手に投稿しているのリアルにフィクションが侵略しているのだから、大概頭がおかしいと思う。

いや、こんなことを書いてもきっと面白くはない。

この話こそがセクハラだとも思えてきた。

改めて、創作アカウントとこちらのアカウントは分けるべきだと思った。